President’s Message

会長就任のご挨拶 (Japanese only)

日本糖質学会会長

深瀬浩一(大阪大学)

 本年度より日本糖質学会会長を拝命しました。皆様ご存知のように、先達のご努力により我が国の糖鎖科学は世界をリードしてきております。その中で本学会は、関連する諸学会とともに、我が国の糖鎖科学の発展を支えてまいりました。これからも糖鎖科学を益々進展させるとともに次世代を担う人材を育成することが本学会の役割であり、会長としての責任を全うし、本学会の発展に尽力してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

 本学会は1978年に設立された炭水化物研究会を前身とし、1989年に現在の学会組織に移行しました。本学会の最も重要な活動は年会を開催して、最先端の糖鎖科学研究を討議することであり、1978年7月に大阪で行われた第1回糖質シンポジウムから昨年7月の旭川大会まで計36回の年会が開催されています。

最近はワークショップの開催やレジェンドレクチャー、特別講演の開催などそれぞれ特色のある年会が開催されてきました。これからも年会開催の支援、活性化に取り組んでまいります。なお本年は、第37回東北医科薬科大学の井ノ口仁一先生のお世話により8月28日〜30日に仙台国際センター(宮城県仙台市)で開催されます。

 本学会の大きな役割の1つは、若手研究者の奨励、支援であり、これまで奨励賞ならびに年会のポスター賞を授与してまいりました。このたび年会において優れた講演を行い、糖質科学の発展に寄与すると期待される若手会員に優秀講演賞を授与することとなりましたので、若手の皆様は奮って応募いただけると幸に存じます。また糖質関連の2つの国際組織 International Carbohydrate Organization (ICO)とInternational Glycoconjugate Organization (IGO)の受け皿にもなり、ICS2010記念糖質科学基金(伊藤幸成代表)による若手研究者の国際学会参加支援、山田科学振興財団への助成金応募の推薦なども行っております。

 糖鎖は生命現象のあらゆる側面において重要な役割を果たしているため、糖鎖科学研究は本質的に境界領域に位置しており、その生命機能を追求するためには、様々な分野との協同作業が必要です。一方で競争は激化する一方ですので、糖鎖研究における新しい方法論やパラダイムを創出することにより、総合科学として糖鎖科学がイニシアティブを取ることを目指すべきであると存じます。そのために、日本糖質学会は、日本糖鎖科学コンソーシアム(JCGG)、Forum: Carbohydrates Coming of Age (FCCA)や日本応用糖質学会、セルロース学会、キチン・キトサン学会などの糖鎖関連学会と連携して、糖鎖科学の振興を進めて行きます。

 糖鎖科学とは直接関係はしませんが、一つ情報を提供したいと存じます。1年以上前になりますが、2016年9月頃に、アドビシステムズ社は、米国、英国、ドイツ、フランス、日本の18歳以上の成人5,000人を対象に創造性に関する意識調査を実施し、世界で最もクリエイティブな国として、日本が第1位にランクインしました(回答者の34%、第2位は米国の28%)。その一方で、自らがクリエイティブでないと回答する割合が最も多かったのが日本だということです。我国の学術や産業の高い水準を支えてきたのは創造性を育成してきた結果だと考えています。もっと自信を持って、慌てずじっくりと研究をしたいものです。

 最後になりましたが、会員の皆様のご健勝と研究の益々のご発展をお祈り申し上げます。

2018年 1月